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サッカーにおいて、軸足のつま先と違う方向に蹴るインサイドキック(通称:ノールックパス)はとても有効です。
このキックができると例えば、二人のディフェンスの間を通す縦パスを出しやすくなったり、インターセプトを積極的に狙ってくる相手を混乱させ、ボールロストを減らしたり、崩しのきっかけが作れます。そして、このお手本となる選手としては、バルセロナのシャビ選手やイニエスタ選手、マンチェスター・ユナイテッドのキャリック選手などで、彼らは試合の中で何度も繰り返します。
私が現役でDFをしていたとき、このノールックパスがもっとも習得したかったスキルのひとつでした。20メートル以上先にいる味方への効果的なパスコースが見えていても、相手に読まれてインターセプトされるのが恐くて、グラウンダーのインサイドキックで出せなかったからです。それにより何度、ボールを浮かしたり横パスに逃げてしまったか(^_^;)
そこで、今回は私が苦手でもあった(おそらくほとんどの日本人選手は苦手だと思います・・・)
軸足のつま先と違う方向に蹴るインサイドキック(通称:ノールックパス)
の大切な要素について書きます。なお、ここでは軸足のつま先よりも内側の方向に蹴る場合(左足が軸足であれば、左足のつま先方向よりも左方向:反時計回りの方向)についてになります。
日本人選手で蹴ることができる選手もいるが・・・
日本人選手でもプロのレベルになるとノールックパスができる選手は結構いますが、海外トップレベルの選手のものとは大きな差があります。
それは、
1.パススピード
と
2.懐(ふところ)の深さ
から生じる
パスの選択肢と出せるタイミングの幅
の差によるものです。日本のサッカーは、海外に比べてパスの出し手や受け手が完全にフリーでない場合、インサイドキックでの効果的な縦パスが少ないと感じます(2014年現在)。これらが、ノールックパスにとって大切な要素です。
差についての解説
まず
1.パススピード
ですが、私が経験と研究をした限り、日本人選手よりも海外の選手の方がほとんどの場合で速いです。体格は関係ありません。体の動かし方ひとつで、パススピードは大きく違ってきます。
なお、パススピードはサッカーのレベルと直結する部分で、スピードが遅ければそれだけボールを失う可能性が高くなり、プレーの幅が狭くなります。
1.と同様、重要で大きな差となるのが、
2.懐の深さ
です。
日本人選手の多くは、ノールックパスを出すときに軸足よりも前方にボールを置きますが、
海外トップレベルの選手は前方だけでなく、軸足の横にもボールを置きます。
ボールが軸足の前方のみでノールックパスができるということは、相手のプレッシャーが少なく、かつボールと体の位置関係が一定の場合のみ蹴ることができることを意味します(=点)。
その一方、ボールが軸足のやや後ろや横でも蹴ることができるということは、相手のプレッシャーを感じながらでも、また、ボールと体の位置関係が多少違っても蹴ることができることを意味しますし、プレーの選択をギリギリで変えやすくなります(=面)。
点と面による懐の深さの違いは、プレーの幅に直結します。
パスの選択肢と出せるタイミングの幅は、1.と2.の掛け算で決まりますから(視野の確保や正確性はここでは考慮していません)、海外トップレベルの方が1.2.ともに優れている点で、大きな差となるのです。なお私の経験では、Jリーグや高校生の全国クラスの選手でも縦パスの出てくるタイミングはほとんど同じという感覚がありました。それに比べてイングランドのユースチームは、まさかというタイミングで出てくるので、ディフェンスが後手にまわることが多かったです。
※1~5点、点数が高い方が良い
日本:3×3=9
海外:4×4=16
その差およそ2倍!!
上の例は、二つの要素の掛け算ですが、小さな差が最終的に大きな差になっていくことの参考として考えていただければと思います。
さらに、
3.海外の選手は同じようなフォームから違う方向へキックができるのが特徴であり、これもインサイドキックのノールックパスにおいては非常に大切な要素
です。ディフェンスは、ボールの飛んでくる方向を相手の視線やフォームから予測するものです。しかし、
「そのフォームならこっちにくる」と、ボールの飛んでくる方向の予測をして外してしまうと、次やその次のプレーが後手になりがちです。
おわりに
日本のサッカー育成では、インサイドキックをはじめとしたノールックパスは『リスクが大きい』『格好つけているだけ』と判断されるのでしょうか、効果的なパスは全国大会のテレビ中継を見ていても、あまり見受けられません。しかし、レベルアップしていくには、少なくともインサイドキックのノールックパスは必須のスキルです。
なので、ノールックパスの大切な3つの要素
2.懐の深さ
3.同じようなフォームから違う方向へキックができる
を意識して、グイグイ上を目指してくださいね(^.^)
Final training session