目次
はじめに
サッカーにおいて、戦術は試合の結果に大きな影響を及ぼす要因となります。そのため、監督が描く独自のチーム戦術や基本的な戦術の習熟は欠かせないものです。
監督が独自に描く戦術に関しては、基本的な方をしっかりと習熟していると理解や実践がしやすいく、どんなチームでプレーするにも、まずは基本的な戦術がベースとなります。
しかし、日本の育成段階においては、私の経験や仲間の話を聞く限り、基本的なものをしっかりと教えてくれる環境は中学校の部活では乏しく、高校のユース年代になるまでは、『テクニック優先の戦術後追い型』になっています。(2017年現在)
今回は、そんな戦術の習熟度とテクニックやオフ・ザ・ボールなどを含めたスキルの関係について書きます。
日本の小学生はテクニックがあるが・・・
2014年現在、日本よりもサッカー先進国でテクニックがあるといわれるスペインの指導者たちは、日本の小学生について
自国と比べてもテクニックがある
と評価しています。しかし、その一方で
攻守の切り替えの意識や基本的な戦術の理解が乏しい
と捉えています。
スペインでは・・・
スペインでは、戦術に対して
戦術とスキルの関係は強い相互関係にあるため、若年層から教えていくことが大切
としています。
日本はスキル優先で、スペインはスキルと同等の位置づけ。ここに上達の大きなヒントが隠されていますね(^_^)
戦術とスキルが相互関係であることがわかる例
ここでは、戦術とスキルが強い相互関係にあることを示す例を挙げていますね。
まずは戦術。攻撃において、相手のDFラインとMFラインの間(=ギャップ。スペイン語で守備組織のライン間のエリアを活用することを「エントレ・リネアス」と言います)にいる味方にボールが収まる(ディフェンダーを背負ってキープしたり、フリーで前を向くなど)と、得点のチャンスを作りやすくなります。そのため、攻撃側のFWやMFは、相手と駆け引きをしながらそのエリアに侵入してボールを受ける必要性があります。
しかし、日本の育成段階では、FWが相手DFと前線へ動くと見せかけて足元でボールを受ける駆け引き(チェックの動き。スペイン語でマークを外す動きを「デスマルケ」と言います)は意識しますが、MFがサイド・バックステップを踏んだりしながら「エントレ・リネアス」をする動き・駆け引きはそれほど意識していません。それは、この「エントレ・リネアス(ギャップ)」をしっかりと理解していないからです。
そしてスキルの話。チェックの動きをして足元でボールを受けるかたちは、ユースの前段階で実践できる選手もいますが、マークされているMFがサイド・バックステップを踏んだりしながらボールを受けるかたちは、海外の試合に比べて少ないと思われます(2014年)。
問題なのは、MFがこのような動きをできず、また仮にできたとしてもパスも受けることができないことであり、ボールの出し手のスキルにも大きく関係しています。
通常、MFがバックステップを踏んだりしながら「エントレ・リネアス」をするときは、相手ディフェンダーがMFの周辺にいて、パスコースは決して広くありません。このときにパスを通そうとするならば、強くて正確、そして予備動作が少ないもしくはノールックなイメージで相手に読まれにくいキックをする必要があります。
少ない予備動作やノールックのキックは、戦術を理解していると逆算思考によりその必要性は強く感じることができますが、理解していなければそうはなりません。多くの日本人選手はこういったキックが苦手ですが、その要因は戦術とスキルの関係を間違えているからではないでしょうか。
おわりに
戦術とスキルの関係は強い相互関係にあり、それを育成段階の指導者や選手が認知することは非常に重要です。若年層の段階で(試合で活きないものも含まれる(^_^;))テクニックはサッカー先進国と比較しても優位に立つくらいですから、戦術の勉強もしっかりとすれば大きく飛躍できるのではないでしょうか。
UEFA Youth League AS Rom vs. FC Bayern【4:57】(0:58あたりのパスは、受け手と出し手が戦術「エントレ・リネアス」を共有しているように見えます(^_^))
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・予備動作は少ない方が良い